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萌木の村マガジン

マンスリー上次さん2024.12月号

2024

Dec

01

社長コラム

わたしが⼦供の頃、住まいの近くに樹齢100年以上の栗の⽊の林があった。⼦供だった私たちでは3〜4⼈で⼿を繋がなければ覆えないほどの⼤⽊だった。また、美しの森の⻄側斜⾯には国の天然記念物に指定された「オオヤマツツジの⽊」があり、ツツジの花が咲くときには多くの⼈がその美しさに魅せられたものだった。双⽅ともに現在は存在しない。今⼋ヶ岳の麓にはそんな⼤⽊や美しい森は少なくなった。昔は多様な樹⽊に覆われていた森だったはずだが、成⻑が早くまっすぐ伸びて、取り扱いの楽なスギやヒノキやカラマツに植えかえられた。経済を優先した結果である。なんとも味気ない森になっている。


先⽇ある⽅々との⾷事会の折、⼋ヶ岳に200年後の森を育てようという提案があった。というのは、この⼋ヶ岳南麓や南アルプスの麓は清らかで豊富な⽔があり、⾃然も豊かで、全国に誇れる⽇照量であることから、今やウイスキー、ワイン、ビール、⽇本酒の⽣産拠点である。しかし、そのウイスキーやワインを⼤切に熟成させる樽の材料になる⽊は育てられておらず、ほとんどは海外に、⼀部を北海道に依存しているのが実情である。北⽶のホワイトオーク、ヨーロッパのスパニッシュオークがほとんどで、ほんのわずか北海道のミズナラである。いずれも⽊の⽬が詰まった硬い材質である。このような材質の⼤⽊が育つのは標⾼の⾼い地域か緯度の低い地域に限られる。⼋ヶ岳⼭麓はこの条件に合致するのだ。


この地で作るものならすべてこの地で循環させていくことが⼀番地球に優しく、⼈にも優しく、⾃然を活⽤しつつ環境を守ることができるのではないかと全員の意⾒が⼀致した。「200年後を⾒据えてミズナラの森を作ろう」とまとまった。200年後にその⼤⽊を伐採して徐々に樽をつくる。そして伐採した後はまた200年後のために苗⽊を植えるのだ。その場所はずっと森として景観が守られ、その森によって⽔も守られ、我々はその森と共に⽣かされていることを誇りに思い、⼼の豊かさを⼿に⼊れられるのだ。

これから200年はみんなの⼒で森を育てよう。⾃分たちの⼦供の代ではないのだ、7代、8代も先の⼦孫のために、今私たちが始めるのだ。ずっと開発されない、ずっと⾃然が守られると思うだけで⼼の安らぎを⼿に⼊れられる。


我々は⽬先のことを考えるのではなく、ずっとずっと未来の地球のことや我々の⼦孫のこと考えて、何かを残すべきなのではないかと思うのです。

※ちなみに樽として役⽬を終えたその樽材は、専⾨的な技術を施したのち、家具や床材として永く我々の⽣活のなかで利⽤されることをご理解いただきたい。


萌⽊の村村⻑


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