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萌木の村マガジン

マンスリー上次さん 2025.9月号

2025

Sep

01

社長コラム

私の周りには農業従事者がたくさんいる。さらに高い山や深い森林、広い草原や高原野菜の畑など自然にも恵まれている。そんな中で今年の(年々過酷になる)温暖化や環境問題は身に染みて危機感を覚える。牛も豚もニワトリも皆、暑さにバテている。野菜畑も暑さのために今までとは違う現象が起きている。長い年月を同じ場所で暮らしていると少しずつの変化でも気が付く。「あれ、10年前とちょっと違う」「30年前の風景と全く違う」と変化に気付く。しかし1年単位では変化に気がつかない場合も多い。

例えば清里から少し下の地域、標高900mほどの田んぼには私が子供の頃はドジョウやタニシがいて、よく取りに行った。田んぼの周りの小川にはクレソンやニッポンゼリなど普通にはえていた。今はなかなかお目にかかれない。そして何より、カエルやトンボや蝶々などが少なくなった。一面咲いていた山野草がどんどん消えている。北杜市は都会から移住してくる人が多いが、数年単位ではその変化にはなかなか気づかないだろう。私のように生まれ育って70年という地元の人にはその変化は顕著である。私はこの状況は非常に問題だと思うのと同時に、強い危機意識を感じる。この危機感の格差がこの故郷の未来のあり方に大きく左右してくる。

ただ、世界の環境の変化を見ると日本の食の問題は相当危険な状況だと思う。野菜は化学肥料漬け、食糧自給率は38%、牛、豚、ニワトリの餌は99%が外国産、食糧や餌の輸送は船便なので防腐剤を使用。他国に比べると薬品の使用がはるかに多い。薬品の使用が原因かわからないが、癌の発症率は日本が世界で一番である。

最近の科学の進歩で農産物に含まれる機能性栄養素が測定できるようになった。現代の野菜と昔の野菜では中身が違う。現代の野菜には機能性栄養素が極めて少ないという。逆に農薬や除草剤などの残留が問題となっている。1回食べたのと2回食べたのでは大きな違いはないが、日常的に長期にわたり摂取すると蓄積して問題を起こす。

全ての生物、微生物も植物も動物もみな怠け者である。我々人類は特に怠け者だ。どんどん楽な方を選択する。科学の進化は楽をするためと経済性を追求するための進化である。従って重労働で非経済的な産業は衰退していく。清里の農業者が減り後継者がいないのもその表れである。何か哲学がなくなってしまったのかなと思う。農業者がいない社会はあり得ないと思うし、肉体労働をしてくれる現場の人がいるから、道路も上下水道も電気もあたりまえのものとして使っているが、今後誰が受け持ってくれるのか?!これでは社会のシステムが維持できない。このようなことは都会で生活していたり、永田町にいたらあまり実感できないことだと思う。人類は食べるもの、飲むもの、安全な空気がなければ存続できない。他のものは二の次、お金や権力は大したものではないのだ。そのことを再認識するべきである。

令和7年9月1日

萌木の村村長

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