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萌木の村マガジン

マンスリー上次さん 2022.11月号

2022

Nov

01

社長コラム

米農家の友人からの手紙

一筆啓上

稲作も 所詮は土地を守る術 米代おおかた 営農に消ゆ(朝日歌壇より)

いつもいつも、お心に掛けていただきありがとうございます。心から感謝しております。

「お茶碗一杯14円!?」農家の売渡価格です。過日、NHKが「迫り来る食糧危機と食糧安保」という特集番組を放映していました。日本のカロリーベースの食料自給率(=1人1日あたり国産供給熱量÷1人1日あたり供給熱量)は37%だそうです。

第一次世界大戦で海上封鎖による食糧不足で、塗炭の苦しみを味わったドイツやイギリスはこれに懲りてドイツの自給率は86%、イギリスの自給率は65%だそうです。日本も戦後の食糧難で同じ苦しみを味わったはずなのに、誰もが食に溢れ、衣服溢れる日本に食糧危機など来るはずがないと思っています。しかし、日本はウクライナから小麦を輸入していないのに、海上交通路がロシアのウクライナ侵攻によって破壊されたため、食パンやスパゲティなどの小麦製品が値上がりしました。アメリカやカナダなどの穀物輸出国では、干ばつや大洪水で収穫量が大幅に減少しています。そのため、世界中で食糧の争奪戦が起きています。

政府は小麦価格の高騰を機に米の消費量を増し、食料自給率の向上を図るのかと思っていたら、製粉会社に売り渡す小麦価格を据え置くことにしました。小麦製品が値上がりしても、米の値段は消費の落ち込みによりコシヒカリなどの銘柄米は下落しそうです。

稲作は水がなければ栽培できません。その水は水路を伝わって流れてきますので、上流で1人でも耕作放棄や水路管理を怠ると下流域まで流れてきません。だから稲作は地域の共同作業なのです。しかし、農業従事者の70%が65歳以上で、平均年齢は67.8歳です。こんな状況の中、採算に合わない稲作がいつまで続けられるのでしょうか。現在の米の生産量では、日本人が1日3食、茶碗に1杯ずつ食べたら到底足りないそうです。日本は食料の60%以上を輸入に依存していますが、海上交通路が破壊されたらどうするでしょうか。

何はともあれ今年もコシヒカリの収穫が無事終わりました。新米には今や高級魚となったサンマが一番です。どうぞ豊葦原(とよあしはら)瑞穂の国の新米の「味と香り」をサンマと一緒に味わってください。

追伸、新米ですから少しだけ水を控えめに炊いてください。

敬具

下り坂の時代に何を求めるのか?

私の友人の丹沢和平さんから、こんな手紙と共に新米が送られてきました。都会にいると気がつかないかもしれませんが、地方にいると未来が心配でなりません。それは、環境がどんどん変わってしまうからです。特に異常気象はここ数年変化が早いです。野外で清里フィールドバレエ公演をしていると、目まぐるしく予想を超えた速さで変化する天候との戦いです。

そして一次産業に関わる人の高齢化も大きな問題です。清里はかつて酪農のまちでした。乳牛を飼って、乳を絞って生計を立てていました。何十軒とあった酪農家が今や数軒です。ここ3年、コロナの影響で存続できなくなり、さらに離農する農家が出ました。本当に深刻な状況です。

戦後の日本は山の頂点を目指す状況でした。しかし今は下り坂の状況です。少子高齢化の時代です。一生に一度の人生。下り坂の時代に何を求めて、どんな価値を見出すのか?先の見えない手探りの時代は続きそうです。

萌木の村村長

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