萌木の村 村民かわら版

八ヶ岳・清里高原「萌木の村」のスタッフが綴る季節ごとの村の表情や、個性あふれる各店舗のあれこれです。
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マンスリー上次さん 4月号

joji_tona.jpg 私は今、大きな夢に向かって進んでいます。それを実現させる一番の近道は、小さな事を一歩一歩積み上げていく地道な努力だと思っています。
 私は清里の初期の開拓時代の落し子です。経済的に恵まれている時代ではありませんでした。たまたま父母がポール先生の夢の事業であるモデル事業のスタッフだったという事が私には大きな子供の時の財産になりました。そこで働く輝いている人達、どんな苦難があっても乗り切っていく人達、目的達成の為には最善の努力をする人達、そして感動を手に入れ、大きな喜びを皆と共に共有する人達。そんな素敵な人達の中で育った私は、子供の頃の経験が今の私の価値観の中に大きく影響しています。特に火事で焼失してしまった今は無き旧清泉寮は素晴らしい建物であると共に、インテリアも、テーブルウェアも、すべて博物館級の物ばかりでした。私は事業を始めてからオルゴールに出会い、コレクターとの関りの中で増々本物の人と物と事(イベント、コンサート)に出会えたことで、自分の考えも少しずつ上質になってきたような気がします。決して裕福で、知識が豊かであるわけでもないのに、最高を目指す自分がいます。5年程前から、私とスタッフの間で言葉が通じない事に気がつきました。私の言っている事が伝わらないのです。言葉とは頭の中で考えているイメージを伝える道具の一つです。私は具体的にイメージしている物を言葉という道具を使って伝えようとするのですが、受け止めてくれません。相手の言葉を受け止めるのには、実は相手と同じ位の知識と経験がないとイメージがまったく異なってしまいます。フォアグラ、トリュフにしても一度も食べた事のない人に話をしても理解できません。世界の三つ星のレストラン、一流と言われるホテルに泊まったり食事をした事のない人に、その話をしても理解してもらう事は出来ません。八ヶ岳の有名なリゾートホテルのスタッフは、新人の時から素敵な仕事をしています。学歴を聞くとまあまあの大学を皆出ています。家庭も比較的恵まれていて子供の頃から海外旅行にも家族と行き、レストランにも行き、子供の頃から質の高い物に触れてきた経験がある人達です。私共のスタッフは、そんな環境で育った人は多くありません。私があるスタッフに今まで食べた物の中で一番美味しい物は何だったと聞きましたら、とんかつと答えました。家族で一番美味い物を食べたのは何だと聞きましたら、焼き肉食べ放題、回る寿司屋さん、ファミリーレストランと答えました。人間的にはまじめで素直で最高です。しかし、私の仕事をする上では、彼等に私の夢を理解できる経験値をつけさせなければなりません。私は今、スタッフに思いっきり研修するシステムを作っています。11月から3月までの間に資格を取らせる事、どんな資格でもかまいません。取ったら全額経費を負担します。又、希望を私に提出すれば研修はどんどん行かせます。一昨年はイギリスへウイスキーの勉強に行きたいという希望が出ました。そのスタッフにもう一人つけて二人でイギリス研修に行ってもらいました。昨年は、ドイツへビールの勉強に行きたいと、ベテランのコックさんと新人をつけ3人で研修に行かせました。
 私はスタッフと共に勉強しない限り、新しいイノベーションは生れないと思っています。私達は決して恵まれた能力を持っている訳ではありません。今までの知識も経験もまだまだ未熟です。でも、私はそんな私の仲間にも感動する人生を手に入れさせてあげたいのです。私自身、現在の一般的な物差しで測れば、上・中・下の下です。でも、下であってもピンを目指したいのです。私の思いが通じる会話が出来るようになり、共に最高の一流と思える物を一生に一度手に入れさせたいし、感じられる仕事をさせてあげたいのです。
 皆さん、どうか私達を磨いて下さい。厳しい指摘をして下さい。私も、私共のスタッフもまだまだ上質の本物を知らないのです。いつか私達は、その上質の本物が普通である世界を萌木の村として作りたいのです。その為に、私達の気がつかない事をどんどん指摘して下さい。この清里でモデル農村を作ろうとしたポール先生の夢を、私達は今の時代に作りたいと思っております。
上次さんの気持ち
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